ラノベにもいいのはある
本棚のちょっとしたコーナーにあるイラスト表紙の、ちょっと手を出しにくい書籍類。敬遠してしまう人もいれば、つまらないシリーズを延々買い続ける人もいます。
僕はジャンル自体の否定をするわけではありません。しかし、しょせんエンターテイメントであるというような諦めというか、甘えがどこかしらライトノベル業界にはあるようで、良作に巡り会う機会が、古典文学作品群に比べるとやや低いというのが現状かと思います。今回はたまたま自分が読んで、これは悪くないなと思った初心者用のライトノベルを幾つか紹介したいと思います。
ちなみに自分はファンタジー系が苦手な口があり、逆にミステリー系が好きなのでその趣向が色濃く反映されるかもしれません。
【電撃文庫編】
・時雨沢恵一著「キノの旅」電撃文庫
巷ではエンデの「はてしない物語」に似ているとか似ていないとかそういう噂のある、やや不思議な国を主人公が旅する短編集。あまりにも有名すぎるかなとも思いましたが、中には泣ける話もあるので載せました。
・秋山瑞人「イリヤの空、UFOの夏」電撃文庫
この辺りは有名どころ。高橋しんの「最終兵器彼女」に似ているとの批判もあるがそんなの関係ねぇ。秋山氏は一般文壇でもやっていける文章力だと思うんですけどね。有川浩が頑張っているみたいだし。とりあえずミナミノミナミノの続刊出してください。
・久住四季著「トリックスターズ」電撃文庫
ミステリー好きならこの作品から入ることを強くお薦めします。西澤保彦が好きな作者が書いた、魔法をネタにトリックを展開する素晴らしいミステリー。特に三巻目がお薦めで、このトリックはミステリー史に残る物だと私は思いますがどうでしょう?
・竹宮ゆゆこ著「とらドラ!」電撃文庫
ライトノベルって仮に学園モノであっても変な必殺技とか世界観を良く持ち出してきて、わりとげんなりする作品が多いんですが、これは学園モノの範囲内でちゃんとストーリーを展開していて、なおかつキャラクターにも魅力があり、ライトノベルの持つべきエンターテイメント性をしっかり抑えている、地味ですがなかなかの作品だと思います。全部読んでいる訳じゃないんですが(笑)。
【その他レーベル】
・山川進「学園カゲキ!」ガガガ文庫
最近注目のレーベル、ガガガ文庫。色々チャレンジしていて非常に偉いと思います。ゆずはらとしゆきや佐藤大の跳訳シリーズを推そうとも考えたんですが、あれはちょっとコアなのでこちらを紹介することにしました。
キャラクター重視になりがちなラノベ業界で、珍しく(?)ストーリーに渾身の力を込めた作品ではないかと思います。批判性もあるし。
・桜庭一樹著「GOSICK」富士見ミステリー文庫
直木賞受賞おめでとうございます。この作品はキャラクター傾倒なのかと思いきや、歴史に深く踏み込んでいてなかなか面白いなと感じた作品です。4巻がお薦め。
・桜坂洋「よくわかる現代魔法」スーパーダッシュ文庫
どういった部分が面白いのかいまいちうまく言えませんが、なんとなくサイバーかつファンタジーな設定が効いているかなと思ってついつい読んじゃう作品。変な作品読みたい人にはお勧めします。
・谷川流著「涼宮ハルヒの憂鬱」角川スニーカー文庫
今まで何だかんだ言ってきましたがやっぱり真骨頂はこれだと思う。つい最近のライトノベルの方向性を定めたのはこれだと言っても過言ではなく、逆に言えば余程のことがなければこれを超える作品はなくなってしまったというのが現状かもしれないです。谷川流はライトノベル界の夏目漱石とも言うべき人でしょうか(他の作品はつまらなく、多様性には欠けるかも知れないけど)。優れたミステリーとしても読めるので、やはりこれから入るのが一番なのではないでしょうか(ラーメン二郎に三田本店から挑戦する気分ですねw)。