ミヒャエル・エンデ著「モモ」岩波少年文庫

 ドイツ人作家による児童書です。作品のテーマは「時間」と人間性で、まさに現代日本の風潮を風刺したかのような作品です。過去に書かれた小説のはずなのに、メッセージ性は非常に現代的です。この作品は過去についてのものか、未来についてのものかどちらでもいいといった言葉が作品の最後にありましたが、そういうことなのでしょう。
 時間を気にせずきままに生きて、周りの人物を楽しませていたモモですが、ある時灰色の男が街にやってきて、無駄な時間の浪費はやめて時間を貯蓄しよう、と話を持ちかけるのです。見る見るうちに街の人々は気ぜわしくなり、口も利かずいらいらし始めます。この事態を打開するためにモモは立ち上がります。
 話の構成が非常に魅力的でした。最初の章で子どもたちの遊びにあれだけ文字を割いたのも納得行きます。児童書なので、現代の子どもにも読んでもらいたいですが、是非とも大人にも読んでもらいたい本です。

モモ (岩波少年文庫(127))

モモ (岩波少年文庫(127))