佐藤大著「脳Rギュル2」ガガガ文庫

 例の夢野久作跳訳シリーズ」のシリーズ第二作です。第一作の事件が終わったあとの続きが描かれています。以下、若干ネタばれを含むかもしれないのでご注意ください。
 今回のでだいたい跳訳シリーズの方向性がわかりましたね。第一にエンターテイメント性で、そこに昭和期のエログロナンセンスがやや加わるのでしょう。そしてライトノベルをやってのけますから、まあカオスです。
 文体は綿谷りさ、内容は松本清帳登場以前の怪しげなもの、とでも言いましょうか。
 個人的には非常に楽しめました。ただ、ガガガ文庫はどうしてこれほど読者を選ぶような作品を作るのでしょうか。もうちょっと一般向けにしてもいい気が、少なからずしました。なんでもかんでも「萌え」の概念を持ち出せば現代チックになる、という発想は捨てたほうがいいかもしれませんね。ラストの、今回のストーリーにおけるメインヒロインの描写などは必要ですが、表紙と挿絵、若干の無駄なシーンは不必要です(そういや、温泉で百合的展開があったけど結局何もなかったな……)。
 読んでいる最中は楽しいけど、後に残る印象が少ないのは、徹底したエンターテイメント性に何かが欠けているのかもしれません。過ぎたるは猶及ばざるが如しという言葉もあります。まあ、つめ過ぎは良くないということです。
 若干厳しめに言ってしまいましたが、このレーベルや跳訳という試みは今も応援中です。次の巻が出れば是非とも読みたいですね。やっぱり面白いから。

脳Rギュル 〈2〉 ショートツ心臓とヤネ (ガガガ文庫 さ)

脳Rギュル 〈2〉 ショートツ心臓とヤネ (ガガガ文庫 さ)