森雅裕著「椿姫を見ませんか」講談社

 トリックはたいしたことないですが、ストーリーが面白いたぐいです。
 森雅裕は会話の描写がセンス溢れていて、たまにクスッとくる感じです。これは処女作「モーツァルトは子守歌を歌わない」と似たような傾向でした。あの作品は歴史+コメディー+ミステリーといった構成ですが、今度のは青春ラブコメの要素が強いかと思います。江戸川乱歩賞受賞作家にしては珍しく(良い意味で)軽い文体で、読みやすいけれどもストーリーがしっかり頭に残ります。いくつか印象的なシーンがあるんですよね。
 さわやかな青春ミステリーといった感じでしょうか。実はこの本、「涼宮ハルヒの憂鬱」作者、谷川流による「長門由希の100冊」に入っているんですよね。
 考えてみれば、ヒロインはハルヒに、主人公はキョンにものすごくにている気がします。このようなところに因果関係があるんでしょうかね。谷川流がこれを読んでヒロインのキャラ設定にはまり、ハルヒを生み出した可能性は大いにあります。
 絶版本ですが、出来は良いのでお勧めです。

椿姫を見ませんか (講談社文庫)

椿姫を見ませんか (講談社文庫)