北関東、両毛線紀行


小山駅で栃木名物のレモン牛乳を購入。
両毛線の車内に乗り込み、レモン牛乳を取り出す。しかし、友人がカメラで写真を撮ろうとしても、シャッターがおりないというハプニングが発生。レモン牛乳の呪いが囁かれる。友人と乾杯しようと容器を持ち上げたところ、ストローから中身がこぼれて足にひっかかった。これは呪い以外の何者でもない。早く飲んで成仏させようと、ストローを口に含んで啜ってみたところ……。

まずい。

何でこれが人気なのかよく分からない不味さ。なんとなく薬っぽく、レモン牛乳と名付けられておきながら無果汁である。関連商品でキャラメルなどが販売されていたが、あまりお勧めできない地域限定飲料でした。

さて、列車は岩舟駅に到着。小山駅の乗り換えホームの暗澹たる雰囲気を通り抜け、雪のため遅れに遅れた主人公がようやくたどり着く新海誠氏の映画、「秒速5センチメートル」の舞台がこちら。

思ったより住宅街だな、というのが正直な感想。両毛線は田舎を走っているわりには有名な駅が多く、途中駅でもやや発展しているのではなかろうか。沿線の駅を見てみると、小山、栃木、佐野、桐生、足利、伊勢崎、高崎と、小学校の地理に出てきそうな駅ばかりが続き、各駅の間に無人駅が1、2駅ある。まさに、両毛線は北関東の山手線、と言えそうである。

到着しました佐野駅。最初に向かったのは佐野厄除け大師、通称SYD。栃木出身のU字工事のネタに由来する略称ですが、あまりにも面白いので広めている最中。SYDには金ぴかの銅像などいろいろ東南アジアチックなものがあった。

そして、佐野と言えば佐野ラーメン。以前、和歌山でラーメンを食べた際、思ったほど美味しくなかった経験があり、ご当地ラーメンといえどもたいしたことはないのかなと思いきや、食べてびっくりこれが美味いこと美味いこと。
今回おじゃましたのは駅前激戦区の清養軒。

出てきたラーメンは麺が「ワンタン」みたいに柔らかく、スープもまろやかでしつこくない醤油味。特にこれという特徴がないものの、醤油ラーメンの魅力がふんだんに詰まっているちぢれ麺で、非常に満足。実際、レモン牛乳のショックを忘れさせるほどの美味しさ。ラーメン食べるためにまた佐野を訪れても良いと思った。

そして、佐野駅の自由通路は花見のできる公園に直結していた。駅を出たところすぐに親子連れがシートをひいて花見を楽しんでいるのである。これはすごい。駅前徒歩0分の花見スポット、佐野駅前。これはもっと宣伝してもいいだろう。



佐野はJRだと山手線各駅から1890円とかなり遠いが、東武線を使えば1000円以下で行くことが出来る。美味いラーメンもあり、SYDなどの観光資源もあるが、現状としては東北自動車道の佐野SAに車が殺到して佐野ラーメンを食べたつもりになって、せいぜい郊外にあるアウトレットモールに行くくらいが相場である。しかし、佐野の町並みには川越を彷彿とさせる古い町並みが残っていて、非常に魅力的だと言える。佐野SAに立ち寄って佐野を訪れた気になることなく、実際に鉄道で町を訪れて魅力に浸ってみるべきだ。
個人的には佐野を応援したい。ラーメン屋の数はとても多く、前述したように町並みも魅力的である。何らかの政策があれば、佐野はもっと進化し、観光客も呼び込めるのではなかろうかと考える。是非、佐野の観光は頑張って欲しい。

さてさて、両毛線上信電鉄を乗り継いで、お次は群馬県富岡製糸場を目指した。上信電鉄は地元下仁田のコンニャクを広告していて、子供が「あ、こんにゃく電車だ!」と呼んでいた。実際、座席に揺られてみるとこんにゃくのように椅子が柔らかく、びょんびょん跳ねる。

長い時間電車に揺られ、上州富岡に到着。富岡製糸場までは徒歩10分ほど。

これがなかなか壮観である。
当時は異色の煉瓦づくりはフランス人技師が無理矢理日本の職人に発注したもので、埼玉県を中心に集まったとび職達が試行錯誤を重ねた結果、「しっくい」で固めた煉瓦と木で囲んだ独自の工法で倉庫を建築。さらに、雷の多い群馬県らしく、屋根の上にはおしゃれな避雷針が取り付けてある。
田舎に突如出来た馬鹿でかい工場は当時の地域住民を相当困惑させた。特に、夜通し行われるパーティーでフランス人が赤ワインを飲んでいた光景を目にし、「外国人が若い女を呼び込んで生き血を啜っている工場」という風評が広まってしまったそうな。
製糸工場内部は凄かった。小学校の時、社会科資料集で見たイラストの光景が脳裏に浮かんだ。そして、日本の発展を影で支えたのは東京都でもなんでもなく、群馬や埼玉だったんだなと激しく実感。今ではあまり注目されないが、観光事業も頑張って欲しい。富岡製糸場世界遺産の暫定リストに載ったことで相当盛り上がっている。できるなら、上信電鉄と協力して往復割引券をセットにした乗車券など、何かオプションをくんで欲しい。

最後に吾妻線金島駅へ。地元の温泉である「富貴の湯」に入浴後、高崎から湘南新宿ラインで帰宅した。この列車を使えば群馬や栃木なんてすぐである。是非とも、観光客が増えてくれることを願ってやまない。

高崎駅名物のだるま弁当と、富貴の湯独自の日本酒。