館淳一・睦月影郎・北原童夢・田拝聡一郎:編著「作家養成講座 官能小説編 ―ベストセラーH小説の書き方教えます! 」ベストセラーズ

 普段ならこの記事の下に楽天かアマゾンのリンクを貼るんですが、どうやらアダルトな商品は貼れないようです。残念賞!
 見た目と違ってかなり真面目な内容ですよ。まずは、官能小説とは何ぞやという基礎知識から始めて、官能小説を書くためには、純文学へのステップアップや金稼ぎなどを考えることなく、自分の性癖、恥ずかしい妄想を惜しげもなく発揮できる人物、小説でも書いていないとあらゆることのはけ口が見つからないという人物が向いていると説いています。確かにそうなんでしょうね。
 考えてみれば、官能小説は文章だけで人間の身体機能に影響を及ぼしてしまうすんごいものです。科学でこの原理を証明するのは不可能なんじゃないでしょうか。だから、人文科学的アプローチで官能小説を分析し、「抜ける」作品を学術的に書くのは不可能でして、やっぱり作者本人の妄想力にすべてがゆだねられているのです。純文学でエロいことを書く人はいっぱいいますが、彼ら彼女らは別に実用的なことを考えて書いているのではなく、あくまでも作品のエッセンスに用いているのですね。だから官能小説作家はすごい。小理屈を並べれば下手な作品なら書けてしまう純文学とは対極をなすわけです。
 余談ですが個人的に気になるのはいわゆるギャルゲーの立ち位置でして、あれらの作品は「文学だ!」と形容される作品もあれば、本当に実用目的のものもあります。その境界線を見出すのが非常に難しい。きっと、大きな物語の中に一部、イベントとして官能小説的要素が入っているのでしょう。物語内物語、とでも言いましょうか。だからギャルゲーのノベライズってしっくりこないんですよね。大きな物語の中にある官能的要素だけを抽出して大きな物語を蔑にするわけですから、そりゃつまらんです。
 かなり本そのものからずれた議論になってしまいましたが、少しでもこういうのを書きたいなと思った人は読んでみるといいですよ。自分には向いていない、と判断するのもまた勉強の一つです。自分ならできるかも、と思った人は熟読して上を目指しましょう。