浅暮三文著「ダブ(エ)ストン街道」講談社文庫

 メフィスト賞受賞作、ということで読んでみましたが、正直な感想としては、これはもっと評価されるべき、です。ミステリーではまったくないのですが、ダブ(エ)ストンという謎の土地に彼女を捜して迷い込んだ主人公が、個性豊かなキャラクターに振り回され、またダブ(エ)ストンという異色の地に翻弄され、これからどうなるのか!? といった話です。読んでて先がもの凄く気になりました。読んでいるだけで、幻想的な変な土地の光景が視覚的に広がってとても良いです。ラストは高まる! 読者を思いっきり引きつけるコレ、といったものはないんですが、全体的にほんわかしているので個人的にはお薦めです。
 それにしてもどうしてこのミステリーでもない小説にメフィスト賞が行ったのやら(笑)。思うに日本の文学界に、こういう変な所でぷかぷか浮かんでいる文学作品に与える賞がないのが問題なのでしょうね。みんな芥川なら芥川、直木なら直木に固執して。そういう(この小説のように)路頭に迷った(?)作品を取り上げるのが、メフィストの本当の役割なのかもしれません。こういうの書きたくなりました(笑)。

ダブ(エ)ストン街道 (講談社文庫)

ダブ(エ)ストン街道 (講談社文庫)