夏目漱石著「坊っちゃん」新潮文庫

 前々から読もうと思っていたのですが、なかなか読めなくて先に松山へ行ってから読むことになってしまいましたが、いろいろ発見があって面白かったです。例えば道後温泉本館の浴場には「坊っちゃん泳ぐべからず」という看板があり、小説と何か関係有るだろうと考えていましたが、小説内のエピソードに主人公(坊っちゃん)が温泉に行くのを日課としていて、行く度に広い浴槽で泳いでいたらいつしか泳ぐべからずという看板を出されていた、というものがあり、これに基づいて道後温泉側がセンスを効かせたのか、それとも昔からこの看板があって夏目漱石がそれにヒントを得たのかどちらかでしょう。
 松山、もうちょっと良いイメージで書いて欲しかったです。良い意味でまあ、人間くさい街ではあるんでしょうね。東京と比べてああだこうだと田舎を馬鹿にする口調でしたので。まあしょうがないけど。
 あと松山の鉄道が詳細に描かれていて、松山旅行の際本当に坊っちゃん列車に乗ってきて良かったなと痛感しました。坊っちゃんは最終的に鉄道技師になるんですよ。
 個人的にはマドンナにもうちょっと出てきて欲しかったです。うらなり君は頑張って欲しいです。山嵐格好いい。本当にキャラクターが生き生きとしていて、物書きとしては文章の上手い夏目漱石を羨望の眼差しで見つめるしかありません。人間心理を描くならまず間違いなく漱石が一番でしょう。

坊っちゃん (新潮文庫)

坊っちゃん (新潮文庫)