シェイクスピア著「コリオレイナス」ちくま文庫

 友人の薦めで読んでみましたが、物語構成法の基礎中の基礎をこれでもかというくらいしっかり押さえている名作ですね。起承転結が非常にすっきりしていて、盛り上がるところなど、本を読んでいて非常に盛り上がれました。小説創作をしている人は是非ともシェイクスピアを参考にしたいところ。
 さて内容ですが、大偉業を遂げた英雄が民衆に媚びたくない故、みんなの前で民衆を馬鹿にしたような発言をしてしまいます。ローマは選挙制が整っていたので民衆の反発は強く、彼は陰謀により島流しされ、かつての敵だったオーフィディアスとタッグを組み、ローマを攻めようと目論みますが……。
 コリオレイナスは自分に正直なんですね。今の日本の政治を見ると民衆に媚び、ひたすらアピールはするけどいざというときに何もできない政治家ばっかりでどうしようもないなと思うんですが、その点コリオレイナスは格好良い。やはり英雄とはこういう人のことを言うのでしょう。しかし彼は近年の下手な小説に代表されるような単なる記号的英雄というのではなく、目の前に提示された選択肢に彼なりに悩み、そして自分の信念を貫いて自分が正しいと思う方の選択をしていくのです。恐らくコリオレイナスの行動が正しかったか間違っていたかは誰にもわからないでしょう。でも母親に説得されるシーンは本当にいいな。
 最終的には悲劇ということで結末を迎えますが、彼の力強い生き様が見られる小説として、またシェイクスピアのセンスと物語構成力が光る傑作として、是非ともご一読をお薦めします。

シェイクスピア全集 14 (14)コリオレイナス (ちくま文庫)

シェイクスピア全集 14 (14)コリオレイナス (ちくま文庫)