小酒井不木著「小酒井不木集 恋愛曲線」ちくま文庫

 表題作を含め数多くの短編を収録。この本、わりと入手困難でネットで本を購入しない僕は探しに探した挙げ句、池袋の古本屋で1800円で手に入れました。
 表題作「恋愛曲線」はとある怪しい医者の物語。詳しく語るとネタバレになってしまうので控えますが、ラストのどんでん返しが本当に凄い! 探偵小説を読み慣れた読者なら途中でオチが分かっちゃうかも知れませんが、それでも本当にいい話なので。というかこの時代にここまで凄い探偵小説があったこと自体が驚きです。
 また、二作目の「人工心臓」もなかなかの出来映え。医者である小酒井不木ならではのミステリーで、このアイデアならば現代でも十分通用するかと思います。その他にもいろいろ短編はありますが、出来が素晴らしいのはやはり最初の2編ですね。あとは猟奇性はあるけどミステリーとしてはいまいちといったところでしょうか。それでも「痴人の復讐」など、短編ミステリーの基礎的なもので非常に参考になるものもありますし、酒井不木の独特な世界観は病みつきになります。是非ともご一読下さい。