鮎川哲也著「リラ荘殺人事件」角川文庫

　わりと古い作家なのでやや戦々恐々しながら読んでみましたが、予想外に面白かったです。
　まず驚いたのが本格ミステリとして喜ぶべき（？）、変な登場人物の描写が良くできていたことですね。なんだか怪しい人間関係が展開されていったこともあり、また文体もそこまで硬くはないのでわりと読みやすかったです。トリックは理詰めで良くできていると思いますよ。特に探偵役が格好いい。最初から事件に巻き込まれていたわけではなく、途中から参加して状況を聴いて推理するのですが、なかなか凄いことをやってくれるのでそこは素直に驚きました。それにしても、特にミステリーの場合はトリックをばらさずに書評するのは難しいですね（笑）　これが刊行されたのと同時期に松本清張が「点と線」を発表したらしく、いまいちミステリーファン以外の一般人における知名度はあまりない作品ですが、読んでおく価値はあるかと思います。
　

リラ荘殺人事件 (角川文庫 緑 374-6)