松本清張著「点と線」新潮文庫

 東京駅の13番線に立って、あさかぜが停車中の15番線を見通せるのは……というあまりにも有名なトリックで話題の作品です。先日ビートたけし主演でテレビドラマやってましたね。なかなか面白かったです。
 松本清張と言えば社会派推理小説の祖ですが、本作はどちらかと言えば時刻表ダイヤトリックを駆使した本格推理小説、の一面の方が強いかも知れません。ドラマの方では小説よりも社会派的な側面をより際立たせていたと思います。
 松本清張は日常に潜む些細なところからトリックを思いつく天才ですよね。九州から北海道まで、まさに全国の「点と線」を舞台とした、全国規模のミステリーです。
 ただ、個人的にはこの本、やや読みにくいかなという印象がありました。トリックの大胆な所で言えば、「点と線」よりも「Dの複合」をお薦めします。いずれにせよ、こういう小説を書けるのは一辺倒になることのないマルチな才能を持つ松本清張だけですよね。独自の視点を持ち、ミステリーで社会批判をやってのけるのが凄いです。