小泉八雲著「日本の面影」角川ソフィア文庫

 小泉八雲と言えば「怪談」「耳なし芳一」などで有名ですよね。その彼が日本を訪れ、そこで感じたことを赤裸々に綴った、いわばエッセイです。彼は本当に日本の愛好家で、当時の庶民文化、その根底にある神道という他にはない宗教思想、その他様々な日本のエッセンスを凝縮し、日本という国を知る上で重要な史料となっていると言えます。このような視点からでなければ当時の文化をより客観的に見ることはできなかったでしょうし、今となっては失われてしまった日本の側面を最も刻銘に記した著だとも言えます。読んでいてなかなか感動的というか、心が洗われる想いがする本なので、もちろん深く研究することもできますが、ちょっとした気分転換、神社巡りのお供にお薦めします。これを読むと、むしろ今の日本に憤りを覚え、小泉八雲に申し訳なくなってくるでしょう。