米澤穂信著「インシテミル」文藝春秋

 いや〜まだ読後の興奮が冷めないほどです。
 まず、導入の設定から非常に面白いですよね。いわゆる殺人ゲームなんですが、東浩紀的に言えばゲーム的リアリズムがきちんと示されていて、登場人物の気持ちになって読み進めていくことができます。
 提示されたルールが存分に伏線として作用する、発想は大胆でありながらトリックはとても精緻に組み立てられ、ニセモノではない、真っ正面から本格モノとしての推理が楽しめます。話は途中で何回も何回も超展開を重ね、本当に最後まで飽きない作りになっています。
 ここ最近読んだミステリーの中ではダントツに面白かったですね。自分の好きなミステリー十選に入れてもいいくらいです。何より、これだけ大胆かつとんでもないストーリーを用意しながら、最後はうまく伏線を拾ってバカミスやアンチミステリではない、れっきとした本格ミステリに落ち着け、読者を存分に驚かせるというのが凄すぎます! 緻密な論理展開がウリにできるのはいいですよね(最近の作家では有栖川有栖も良いですが)。いや、大満足でした。正直「氷菓」とは比べものにならない出来ですよね。
 あと個人的な感想を言えば、表紙がとても気に入りました。須和名さんのキャラクターも好きです。単行本に付いている帯の文章が久々に正しいなと思った本です。

インシテミル

インシテミル