さらば副都心線

どうしても書かなくてはいけないと思って書きました。

副都心線の遅れの原因をリストアップしてみました。
・10両車と8両車の混在による乗客の混乱
・行き先・種別などによる乗客の混乱
・西武車・東武車にTISを無理矢理付けたことによるオーバーラン
小竹向原駅における複雑な運行

僕が主張したいのは、「便利さ」だけが公共交通機関に必要なものではないということです。
渋谷行・新木場行などがあり、乗客が自分の行き先に応じて電車を選べるシステムは一見便利かもしれませんが、ラッシュアワーにぶつかると混雑の原因になるのです。
自分は諸事情で武蔵小杉駅の混雑を毎朝見ているのですが、そこは目黒線三田線方面、南北線方面へそれぞれ向かう駅であり、ダイヤの都合上三田線方面が三本続き、南北線方面への乗客は座るためにずっと後発の列で待っているという状態になります。
すると何が起こるかというと、列が長大化し、三番線のホーム領域を遙かに越えて四番線の黄色い線の外側まで列が延びてしまうのです。
小竹向原駅にはホームドアが付いていますが、混雑することにはかわりないでしょう。おまけに10両編成だと思っていた列車が8両しかなく、余った2両分の箇所に並んでいた乗客がわっと一つのドアに押し寄せて大変なことに……。

東武線は副都心線西武線有楽町線に直通すると限定する、というのが本来の計画だったそうです(先輩談)。
しかし、東京メトロは利便性を追求し、渋谷方面・新木場方面を混ぜることを実施しました。
東京都民なら地下鉄の路線図くらい覚えろよ、というのが僕の正直な意見ですが、僕だって時々間違える時がありますし、かなりの修行がなければ覚えられないでしょう。
ラッシュアワーに駅の案内図までたどり着けないことはよくあると思います。「清瀬」「志木」「新木場」「渋谷」「飯能」などの文字を読んで人々は乗る列車を決めなくては成りません。
目黒線なんて「西高島平」が三田線、「目黒」が目黒止まり、あとはだいたい南北線なので簡単じゃないかと思っていても、間違える乗客はいっぱいいます。果たして、小竹向原に初めて来た人が目当ての列車に乗れるでしょうか。日本国民は全員鉄道おたくになれとは言いません。はっきり言って無理でしょう。
そして一時ダイヤが乱れると、小竹向原の駅はパンクします。混乱がさらに加速し、乗客の不満ばかりが募っていきます。

大阪にはかつて「市営モンロー主義」というのがありました。これは環状線の内側は私鉄の乗り入れを禁止し、そこは市営のバスや鉄道などが交通を担うというものでした。大阪の場合は崩れていますが、東京は同じような政策をとり、今私鉄線は全て山手線沿いの駅かその外側からベッドタウンへ向かう構造になっています。
かつては都電やトロリーバスなどが山手線内側の交通手段でした。関東大震災により都電が失われると、都バスが代替手段としてその路線網を広げていきます。
そして結果的に地下鉄が蔓延り、「直通運転」という海外でも類を見ない概念が東京を席巻しました。
都市社会学の先生は、「東京の地下鉄はもはやロンドンや他の主要都市における地下鉄ではなく、私鉄の延長線になっている」と述べていましたが、果たしてその通りだと思います。

副都心線と全く同じ経路を通っている池86系統というバス路線は今回の開業にあたり減便・路線短縮という運命に遭いました。
この区間はそもそもトロリーバスが運行され、渋谷から中目黒を通って品川の方まで延びていたそうです。
この路線は明らかに、放射線状の【郊外←→都心】という役目ではなく、都心部のある地点とある地点を結ぶ、環状線としての役割が強いです。現に環状線の代表格である山手線が併走していますし(環状線は必ずわっかになっている必要はなく、愛知環状鉄道なんかもありますよね。環状としての役割を担っていれば、たとえ大井町線などの短い路線でもいいんです)。
それでは副都心線はどうでしょうか。はっきり言ってよくわかりません。
有楽町線は都市社会学の先生のいうところの、私鉄の延長線ですよね。副都心線もそうかなと考えると、首を傾げてしまいます。
副都心線の広告には「池袋・新宿・渋谷の三都市が繋がる」と書かれています。これは環状線としての宣伝ですね。けれども、和光市から渋谷まで直通??分という宣伝文句もあるのです。これは放射線としての宣伝です。さて、どちらなんでしょう? 目立つのは利便性というキーワードだけです。都市計画として失敗している感が否めません。
池袋・新宿・渋谷の三都市を結んでいるのは山手線旅客線、山手貨物線です。東京都民はJRを使います。副都心線を使うのは、こう言うと失礼かもしれませんが、いまのところ埼玉県民と準埼玉県民(板橋区練馬区など)くらいでしょう。明治通り沿いに用がある人は池86系統を使えばいいのです。現に本数が減便されましたが、利用客はあまり減っておらず、非常に混雑しているのが実状らしいです。

「便利さ」の追求により犠牲になったものが多すぎます。僕個人としては、地下鉄自体は嫌いではありません。銀座線、南北線なんかは大好きです。
けれども、これ以上東京に穴を掘るべきではなかったと思います。地震があったらどうするんですか。長期的視野で見れば、明治通りを整備して基幹バスレーンを敷きバスのスピードアップをはかる、LRTを導入する、などを行った方が良かったでしょう。
 池袋駅なんて乗り換えが比較的楽な駅です(新線池袋を別として)。ちょっとくらいは歩きましょう。そして疲れたらTJライナーを使いましょう。「直通運転」の弊害は、ダイヤが乱れた時に訪れます。湘南新宿ライン開通により、神奈川県平塚市で発生した人身事故の影響で埼玉県熊谷市の人が迷惑を被るのです。

東急東横線沿線住民としては、副都心線が2012年に渋谷新駅から乗り入れてくるのに断固反対します。
みんなで渋谷までの赤いラインのステンレス車体、遅延回復の早さ、都会では少なくなってしまった頭端式ホームを守りぬきましょう。