デュマ・フィス著「椿姫」岩波文庫

 文句なしに面白い。訳が読みやすかった。
 古典でこんなにはまったのは久しぶりかも知れない。古典を読むのが久しぶりなせいかもしれないけど、それはともかく素晴らしかった。
 ヒロインのマルグリットの華やかさがもの凄く魅力的で、それに対して主人公の駄目人間っぷりが作品の良さになっている。中2病というか、まだ恋愛に不慣れな主人公がいろいろ考えて、娼婦であるマルグリッドとの有限な恋をいかにこなそうかと試行錯誤する過程が非常に新鮮かつ衝撃的。思わず共感してしまう。そしていつか終わりが来る恋だというのはわかっているから、躍起になって情熱的に過ごそうとして、見境もなく恋焦がすのに、どこかに負の予感が感じられるというこのシチュエーションがたまらない。不真面目なことばかり書いてしまったが、絶品の恋愛小説だということは言うまでもない。さすがフランス文学。

椿姫 (岩波文庫)

椿姫 (岩波文庫)