山川進著「学園カゲキ!」ガガガ文庫

 予想外に面白かったのがこれ。
 ガガガ賞を受賞したということもあり、読んでみたのですが、新人なのでやはり文章がちょっと下手なのは目に付きました。キャラクターもどちらかと言えば凡庸で、なんとなく使い古された感じがして個性はないです。しかし読み進めていくうちにわかってきました、これが単なるライトノベルではないことが。
 一見普通のストーリーの裏には緻密な伏線が。後半からはどんでん返し。虚構を演じることの罪、そんな野沢尚破線のマリス」を彷彿とさせるような社会的テーマが出てきたり(ライトノベルでこれをやってのけるのは凄い事)、ヒロイン、主人公それぞれの悩みを抱えていたり。そしてラストの纏め方は目を見張る物がありました。なんというか、ミステリーの手法をきちんと心得ている人なのかもしれません。読み進めていくうちに虚構だか現実だかわからなくなるこの構成の妙はまさに一読の価値ありでしょう。キャラクター重視になり、ついつい本質を忘れがちな昨今のライトノベル、及び文学界に一石を投じてくれる、内容重視・ガガガ文庫の一押し作品です。ガガガ文庫は本当に良質だな。これからも頑張って欲しいです。

学園カゲキ! (ガガガ文庫 や 1-1)

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破線のマリス (講談社文庫)

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