温泉旅行記 終章(鹿児島県) 指宿枕崎線

 長崎鼻開聞岳が望める霧島屋久国立公園である。現地までは宿からバスで向かった。岩のごつごつした場所をひたすら進み、限界まで海の近くまで寄ってみた。辺りでは釣りをやっている人がいる。赤みを帯びた岩に水しぶきが当たって砕けていく。荒涼とした雰囲気はあったが、南に来たんだなという印象はあった。わりと明るい。
 気になったのは長崎鼻の周辺にあった土産屋である。果たして儲かっているのか不明だ。ただし荷物を置かせてもらったおばちゃんはすこぶる良い人だった。そこでサークルの先輩が購入したゆで卵も帰りの飛行機の中で食したが、結構美味かった。
 開聞までバスで行き、郵便局へ立ち寄りながら指宿枕崎線の線路を目指した。せめて駅舎くらいはあると考えていたが、開聞は何もない駅だった。せめて風除けくらいは欲しい物である。菜の花が咲いて春の雰囲気が漂ってはいるが、風のおかげで寒いのだ。
 西大山で数分止まったので写真撮影などを行った。指宿枕崎線の車内ではひたすら寝ていた。春のうららかな雰囲気に、カタコト揺れるローカル線。車窓をじっと眺めているのもいいが、居眠りをするのもまた旅の思い出だろう。
 鹿児島市内では寒いのに白熊を食べてしまった。鹿児島市電で鹿児島まで向かい、日豊本線に乗車する。桜島錦江湾の向こうに広がる絶景が窓の外に繰り広げられる。日はやや傾いて、山は金色に染まっていた。
 加治木駅で下車し、空港連絡バスを待った。空港連絡バスなのだから少しはまともな車両が来るのだろうと思っていたが、やってきたのは小型の日野リエッセである。行き先表示には「空港」としか書いていない。これには笑ってしまった。
 そんなわけで無事鹿児島空港に戻り、土産を携えて羽田の地に降り立った。行きはかなり時間を掛けて九州まで行ったが、帰りはあっという間だった。今回はバス(Bus)とバス(Bath)の旅ということで、できるだけ多くの温泉に入りつつ、地元とふれあいながら乗りたい鉄道・バスもきちっと抑えるという旅行を試みた。なかなか収穫も大きかった。成功している地域、寂れている地域。実験が繰り返されてこれから実用化が進んでいくもの、時代に取り残され消えていくもの。これからの日本は一体どのような姿になっていくのだろうか。数十年後、またこれらの場所を訪れる機会があったとすれば、一体どのように変貌しているのだろうか。正直、僕は不安でしょうがない。かといって特に何もできない自分にもどかしさを感じることもある。
 今回は旅行記をネットで公開し、とりあえず誰かの目にとまってもらえると良いなと考えた。それから、実際に現地に行って自分の目で確かめてくれる人が出てくれば僕としても本望だ。まとまりのない文章になってしまったが、ここまで読んでくれた方にこの場を借りて感謝の意を表したい。そして、是非とも旅行へ出かけてみてはいかがだろうか。そう、お勧めしたい。