手塚治虫著「ファウスト・百物語」朝日文庫

 これは本じゃなくて漫画なのでご注意ください。
 本の前半はゲーテファウストを漫画化した作品です。プロットがわりと違う。なんとなくディズニー的になっていて、あまり好きじゃないんですけど、これがあるのも全ては次の百物語のためなんですよね。
 百物語は手塚治虫ファウストの物語を日本流にアレンジした作品。原作と異なる点と言えば主人公が科学の未来に絶望した学者というよりも、単なるダメな人で、メフィストフェレスが女性だということがポイントです。
 ファウスト(一塁半里)とメフィストフェレス(スダマ)の契約内容はほとんど同じです。しかし、面白いのは両者が途中で恋に落ちてしまうんですね。
 ラストのどんでん返しは素晴らしいの一言。手塚治虫の天才性が伺える作品でしょう。できれば原作のファウストを読んでから百物語に進むと良いと思いますが、漫画版ファウストを有効活用するのもいいかもしれません。
 ファウストは後のドイツ文学やその他に数々の影響を与えました。この間レビューした「影をなくした男」も、実はファウストを意識しているとのことです(悪魔らしき人物との契約、ムク犬を抱きしめるシーン、影というモチーフがファウストにも登場、など)。しかしこのようにアレンジしたのは手塚らしいですね。

ファウスト (朝日文庫)

ファウスト (朝日文庫)

ファウスト(一) (新潮文庫)

ファウスト(一) (新潮文庫)