ドイツ・ビアライゼ(1−2)Hofbraeuhaus

 ミュンヘンの宿に着いたらもう夕方になっていたので、特にこれといった観光をする時間はなく、そのまま飲み屋へ行くことにした。まず最初に向かうのは、ミュンヘンで最も有名なビアホールである「ホフブロイハウス」である。ここはもう、あらゆる観光ガイドにも載っているし、日本人も相当訪れていると思うので、詳しい情報は避けるけれども、まあ要は観光客向けにどんちゃん騒ぎを徹底してやりつづける巨大ビアホールだ。
 店に入るとバイエルン音楽が高らかに鳴り響き、客が入り乱れていた。席はほとんど埋まっていて、自分の座る席を見つけるのがまず難しい。どうしても相席にならざるをえない。案の定、この時間に入ってきた観光客は皆戸惑いながらビアホール内をうろうろしていた。

 我々もようやく席を見つけ、ビールと料理を注文する。料理カウンター近くの席で、数多くのウェイターが右往左往する忙しい場所だった。バイエルンの民族衣装を身にまとった女性が巨大なブレッツエルを売りさばいていて、声を掛けられた観光客の小さい子供と記念写真を撮っていた。そう、ここがドイツである。オヤジもかつてここでビールを飲んだらしい。ミュンヘンの定番なのだ。

 ここでは1リットルのジョッキ、「Mass」が基本。苦味がなくあっさりしているので、意外とすんなり飲み干せる。二杯目に頼んだヴァイツェン(こちらは500ml)がやたらうまい。後日ネットの情報を調べるとやはりヴァイツェンの方がひそかな人気を集めているらしい。
 日本で飲めるビールはだいたい下面発酵ラガーのもので、製法としては比較的新しいものだ。ドイツでは古来から上面発酵の製法が用いられていて、こちらのエールタイプに属するのがアルトビア、後にケルンの項で触れるケルシュ、小麦粉タイプのヴァイツェン(またはヴァイス)などがある(もっと細かく多種多様に分かれているのだが、ここでは割愛させていただく)。バイエルン公ヴィルヘルム4世によって定められたビール純粋令は世界最古の食品に対する法令なのだ。それだけ、ドイツではビール文化が地域に根強く息づいているのである。この大規模なホフブロイハウスも、その一面にすぎない。
 ミュンヘンといえばオクトーバーフェストで有名だ。駅の本屋ではオクトーバーフェストサバイバル術という本が売られていた。街中がこのどんちゃん騒ぎに包まれるとのことで、是非とも一度は見てみたいものである。自分がホフブロイハウスへ行ったときも、隣の机の連中といろいろ会話したし、その隣の連中は罰ゲームかなにかで一人がいきなり床で腕立て伏せをはじめ、周りが爆笑していた。街中がこんな感じになったらさぞかしすごいことになるだろう。日本じゃあ到底考えられない。
 フランクフルトソーセージも美味だった。ビールも決して悪くないし、なんといってもこの雰囲気を体感することができたので、まあ良かったと言えるだろう。さすがに、ビアライゼで毎日こんな店ばっかり入っていたら、ちょっと嫌になるかもしれないが。
 ホフブロイハウスはSバーン、UバーンのMarienplatz駅からレジデンツ方面へ向かった途中、三越ミュンヘンの近くにある。