ドイツ・ビアライゼ(3−3)Zur Stalburg

 フランクフルトはマイン川に沿って核となる線路が環状に走っていて、各郊外から集まってきたSバーンが中心市街地をぐるっと周り、東駅で終点を迎えるようになっている。日本では在来線が地下鉄に乗り入れてようやく中心市街地の各駅で降車することが可能となるが、ドイツのシステムはスタイリッシュである。
 フランクフルト中央駅を通過し、中心街のKonstabler Wache駅で列車を降りた。ここで地下鉄に乗り換える。短い距離であれば、通常の切符よりも安い短距離券が使える。刻印してから利用するミュンヘンの都市交通とは異なり、チケット購入時点で自動券売機が日時を印刷してくれるのだ。フランクフルト感覚でミュンヘンの市内交通を利用すると痛い目に遭うので気をつけたい。

 地下鉄のU5線に乗り込んだ時点は、出入口付近の床に見慣れない構造があることすら気づかなかった。前もってこの地下鉄は地上空間を走るものとは聞いていたのだが、日本の鉄道の用に高架になったところを走るのだとばかり思っていた。真相はすごかった。なんと、地下鉄がそのまま路面電車になるのである。他の乗用車に混じって道路を走る地下鉄、かなり異様な光景だ。線路は道路の中央に敷かれており、駅に着くと乗客は車道を横切って列車に近づいてくる。地下区間ではそのままだった列車の出入口付近が突然下に陥没し、地上へそのまま降りるためのステップとなった。この画期的な発想には思わず声をあげてしまった。

 Glauburg Strasse駅で列車を降り、路上を地下鉄が走り去っていく姿を眺めていると、なんだかこれがウソ画像なんじゃないかと思えてくる。しかしまあ、道路が混雑する中心街では地下に潜り、その他は路上を走るというのは、かなり有効な交通路線と言える。日本だとここまでダイナミックなのは、京阪京津線がそれに近い気はするけれども、都心部にちゃんと機能しているという点では見あたらず、ドイツあっぱれと言わざるを得ない。

 この日に向かったのはとあるドイツ語ネイティブ教員によるおすすめのクナイぺ、「Zur Stalburg」だ。フランクフルトではビール同様りんご酒も有名で、水を混ぜるものとそのまま飲む二種類の飲み方が選べる。

 観光ガイドにはまず載っていない庶民派の店で、料理は安くしっかりとしていた。りんご酒の他に飲んだのは樽から注がれたチェコ系の黒ビールで、これがめちゃくちゃうまい。日本のビールでは味わえない、芳醇な味わいがあるのだ。犬が店内を練り歩き、常連客はトランプカードで悦に入り、多くの人々は外の庭で食事をするという、フランクフルト庶民派の素晴らしい店だった。今一度、この店を教えてくださった教授に感謝したい次第である。

 その日は再び短距離切符を買ってSバーンに乗り換え、駅前すぐの宿に戻った。宿のミニバーがタダなのでビールを軽く飲み、明日へ備えて就寝した。