了法寺に行ってみたよ!

 七福神めぐりといえば室町時代から続く古い信仰で、江戸時代に爆発的にヒットしました。なかでも、八王子七福神は旧来の七福神だけではなく吉祥天を追加し「末広がりの八福神」として地域に親しまれているとのことです。その中でも、最近「新護弁財天」を祀る了法寺が異様な盛り上がりを見せているらしい……。

 ことの発端は2009年5月、境内にこちらの住職が思い切ってアニメ風の看板を立てたことでしょうか。

 寺として異例の「痛車づくり」「コミケ出展」「有名声優による怪談トークショー」等を経て、遂にはPVまでできちゃいました。

 今のところ、了法寺の公式PVではないようなのですが、映像のクオリティーがまさに最先端のアキバ系ポップカルチャーを行っています。住職さん、twitterまでこなしているようで、これはちょっと伺ってみようと決意し、雨の降る日に八王子まで調査に出かけてきました。

 渋谷駅から明大前で乗り継いで京王八王子駅まで350円。そこからさらに京王バスor西東京バスで「千人町一丁目」バス停まで行くとお寺は目の前です。JR西八王子駅からも歩ける距離です。おたく界に一大センセーションを巻き起こした鷲宮神社よりも都心からは行きやすいですね。鷲宮神社はおたく側がアニメから見出し、商工会がそれに目をつけて盛り上げたという形ですが、了法寺は完全にお寺側からのアクションということで全国でも異例のケースとなります。

 例の看板を近くで見てみると、なんとこれQRコードが付いてます。寒川神社(リンク先pdf注意)Suica電子マネーによる支払いサービスを行っているとのことですが、QRコードが案内板に書かれた神社仏閣はここが初めてではないでしょうか。

 このように、境内にはイラストのついた説明文が点在しています。これがQRコードでネット上でも閲覧できるようになっているわけです。お寺のことについて少しでも死って欲しい住職の粋な計らいでしょう。

 そこまで広い寺ではありませんが、雨のためか他には参拝客がおらず、とても落ち着いた雰囲気が漂っていました。一通り本堂や稲荷神社などをお参り。

 PVで踊っていた各キャラクターも、境内の神様仏様に由来します。仏教とはいえ、とても日本的と言えるでしょう。アニメーション的な価値観とよくマッチしています。

 お守りなどを購入。うーん、なんというか秋葉原みたいですね……。

 百日紅の周囲は案の定こんな感じになってました。

 話題作りとしてはとても興味深い試みだと思います。むしろ、今までの神社仏閣はやや排他的すぎたと言いましょうか、東京の各地に神社仏閣が一斉に広まっていった頃は、もちろん保守的な古い信仰も大切にしつつ、各施設とも最先端の話題作りを考え、ご利益の宣伝合戦が繰り広げられていました。江戸時代が終わっても、成田山が当時の京成電鉄と手を組んで初詣客を呼び込んだのは有名な話ですし、京急と川崎大師も同様となります(今でも、京急は叶神社の広告を出してますね)。八王子に残る七福神めぐりなどもその一環でしょう。神社仏閣は、待っているだけでは参拝客が来ないので、自らアクションしていく必要があったのです。
 今現在、活発な神社仏閣はどれだけあるでしょうか。いにしえの伝統だけに縋っているものばかりではないでしょうか。もちろん、そういった歴史を守っていくことも重要です。ただし、誰にも知られないまま廃れていく文化もあります。それはとても勿体ないことです。できるだけ多くの人々に知ってもらうために、了法寺のようなムーブメントを起こすことこそ、現代で必要なことなのかもしれません。
 弁財天は「芸能の神様」としてアキバ系アイドルにイメージがぴったり合うそうです。日々新しい情報が繰り返し生み出されるサブカルチャー世界では、常に先頭に立ってどれだけ話題づくりを行うことができるか、それが鍵になると思います。江戸時代で流行した神社仏閣の話題づくりよりも、数千倍の速さで常に人目を引いていく必要があるでしょう。いったいどのような活動が見られるのか、これからの了法寺に目が離せません。僕個人としては応援しています。どうか、ご利益ありますように。